やはりダンケー珍説において、ある種シンボリックな存在と言えるのが「Y染色体」に関する言説。
珍説供養動画の3本目でも、いろいろとY談をご紹介しましたが
これをご覧になった公論サポーターの「基礎医学研究者」さんから、本職ならではの観点で各珍説へのツッコミが届きました。この内容が大変面白く、いっそう楽しむためのスパイスになりそうなので、抜粋してご紹介します!(太字加工は大須賀)
まずは上の画像の、自民党・古屋圭司衆議院議員のつぶやきへのツッコミ!
まず、「ニュートン誌」というのが、笑かしてくれましたね(;^ω^)。
これは、科学的読みもの雑誌です。科学論文雑誌は、科学データが示され、査読された論文が掲載された雑誌のこと(口からでまかせでも、「Nature誌(イギリス)」とか「Science誌(アメリカ)」とかいえばよかったと思うのですけどねρ( ̄ε ̄。)。
で、“立証”とかいっているので、(不敬を承知でいいますが)神武天皇と今上天皇のY染色体の配列を決定して、直接比較できたということ??いや、これは大胆な意見だ~!是非、データバング(日本だからDDBJか?)に登録された配列を見てみたいものです( ̄― ̄)ニヤリ(一応書いておきますが、もしも数千年レベルのスケールで骨の保存状態が良いのならば、DNAは加水分解から保護されるので、軟骨細胞からDNAの抽出は可能)。
絶対にやっていないのは明白でも、古代のDNA抽出可能というのは科学的好奇心をくすぐられますね!
お次は「X遺伝子」について
X遺伝子!いや一瞬、「この人すげ―Xist(イクジストと読む)のことを知ってるのか~(笑)!」と、思ってしまいました。
実は女性の細胞では2本のX染色体のうち1本は不活性化されて量的補正が行われているのですが(男の場合はXYなのでそれが起こらない)、Xistとは最終産物がRNAの遺伝子で、このX染色体不活性化に密接に関わっていることがわかっってきました。
なので、“X染色体の中のX遺伝子~”と深読みしましたが、きっと違いますよね(^_^)。
あと、3~4代でほぼすべての遺伝子が入れ替わるは、はっきりいって“間違いです”。
自分、自ら作製した遺伝子改変動物の遺伝的バックグラウンドをそろえるために、バッククロスという手法で、自分が合わせたい系統のマウスとの交配を行っていくことがあるのですが、それを数学的に表していくと、このような結果になります(完全に入れ替わる確率を1とし、交配により一世代で半分のゲノムを継承する、と仮定できる)
1-(1/2)^1=0.5
1-(1/2)^2=0.75
1-(1/2)^3=0.875
1-(1/2)^4=0.9375
これによると、3,4世代では、せいぜいのところ90%くらいしか入れ替わりません(残り10%って、結構長いDNA配列ですよ(3000*0.1≒300Mb(ざっくりいてX染色体2本分くらい(;^_^A)。
ちなみに、99%に達するのは、7世代目までいかないといけません(でもこれって、実験的に計画されている形で行ったからできることなのですけどね(;^_^A
たしかに珍説の中には、あまりに常軌を逸した内容に「これは…違う意図がある?」と思わせるものが時々ありますが、大抵は「書いてあるそのまま」です(笑)。
そして、竹内久美子大先生の至言「Yです。」を誘引したこちらの珍説!
これも自分、一瞬深読みしてしまいまして( ̄▽ ̄;)、
「すげーこの人、ring染色体(r染色体?)のことを知っているのか~?もしかして、センモンカか?」と。
ちなみに、ring染色体とは、染色体の両端のテロメアという領域が核の中でちぎれてしまうことがあり、その状態は不安定なので、両端が再結合されてリング状になった染色体のことをいいます。
でも、このring染色体は次世代に継承されるという事実は、ありません(念のため<(_ _)>)
あまりにも変すぎて達人と勘違いされる、ギャグ漫画の定番ネタみたいですが、SNSとはいえこれが現実なのが恐ろしい(笑)
珍説はストレートなアホっぽさにツッコむのも良いですが、こうして専門的に深く分析・解説するような遊びも非常に楽しいですね!
ぜひ皆さんも、お詳しい分野などの観点からの珍説解剖にチャレンジしてみてください!